社員向けの研修で講師をした。受講者は100人を超えた。
PowerPointでスライドを作るのも、人前で講師をするのも初めてだった。
その初めてが、丸一日の社員講習だった。
惨敗だった。
一週間で、丸一日の教材を作った
講習は、給水、給湯、排水・通気、屋外排水、消火の5章。講義260分、演習問題90分。
通常業務と並行していたため、まとまって準備できたのはお盆休みしかなく、それでも結局足りなくて、業務時間も丸2日ほど使ってスライドを作った。
モデル物件を一棟でっち上げ、設定した人員から、受水槽の選定、ポンプの選定、汚水槽容量の算定などを実際に計算した。それを7問の演習に組み直し、問題用の図面も引いた。
スライドは100枚近く。
法令は原文に当たり、事故事例も一次資料まで遡った。
作業には三種類のAIを使ったが、出てきたものはすべて自分で確認し、自分の思いが入るように、順序や内容を直した。
スライドは、基本的に1スライド1メッセージ。下端には、そのスライドで「伝えたいこと」を結論として入れた。
スライドを見られれば、今何を話す場面なのか分かるようにしたつもりだった。
全てのスライドが完成したのが、本番前日。もう嫌な予感しかない。
そのような理由で、講師用のトークガイドも作った。
完成したスライドをAIに読ませ、話す順番、図の見る場所、実務とのつながり、目安時間などを整理したものだ。
台本ではない。普段はスライドを見て話し、言葉に詰まったときだけ確認する。そのための予備だった。
そして私は、本番まで、そのガイドを一度も通して読んでいなかった。もう嫌な予感しかしない。
時間は合った。だからどうした
当日の時間配分は、ほぼ設計どおりだった。大きく押しもせず、余りもしなかった。
だが、時間は制約であって、講習の目的ではない。
器具給水負荷単位の集計では、説明に失敗した。
器具ごとの数値を系統ごとに足し、その合計から管径を選ぶ。
その手順を、演習を解ける形で説明できていなかった。
私は説明したつもりだった。だが、受講者には伝わっていなかった。説明が足りないままスライドが進んだから、予定どおりに終わっただけだった。
100人には見えて、私には見えなかった
当日は、自分の画面にスライドを全画面で表示し、Teams共有するつもりだった。
講師用PCからTeamsへスライドを共有し、会場側のPCで受けて、私の背後にあるスクリーンへ投影する構成。
受講者には見えるが、講師席からスクリーンは見えない。。
普段は複数画面で作図しているので、同じようにできると思っていた。
ところが本番がはじまって。想定どおりに全画面表示できないことが分かった。
Teamsの共有対象に、全画面でもウィンドウでもパワポスライドの画面が出てこない。
スライドのファイル名は表示されていたので、それをクリックしてみると、Teamsの画面の中に小さくスライドが表示されるだけであった。
表や図を拡大すると、Teamsの中の小さいスライドは、端のほうが見切れてしまった。
共有相手には全画面で見えているのに、なんで私の見ている画面はこんなのなんだ。
スライドに書いている文字も、肝心の端に書いた「伝えたいこと」も見切れて見えなくなってしまっている。
なんでこんな仕様なの? 初見殺しか?
後から調べると、PowerPoint Liveというらしい
発表者の画面にノートやスライド一覧を出す代わりに、その表示はTeamsのウィンドウの中に収まる。
私の画面が小さかったのは、そういう作りだからだ。
デスクトップ(画面)を共有すれば、自分の画面もそのまま全画面のスライドになる。でも焦っていた私は、この時これに気が付かず、そういう仕様なのだと思いこんでいた。
そこでiPadを開いてトークガイドに頼った。
作っておいた判断は間違っていなかった。実際、それがあったから、辛うじて進んだ。
ただ、本来は困ったときだけ見るつもりだったものを、想定以上に使うことになった。しかも読むのは当日が初めてだった。
内容はわかっている。元はAI生成とはいえ、全部自分で修正している。
それでも、未読のガイドから必要な箇所を探し、十分に見えないスライドを説明するのは難しかった。
言葉がまとまらず、説明が長くなった。緊張すると、予定していた話も出てこなかった。
講習を終えて帰宅すると、そのまま翌朝まで眠った。懲り懲りだった。

足りなかったのは、話すための準備だった
・PowerPointを本番と同じ環境で共有して試していなかった。
・いつもと違う会場に電車を降り損ねて会場入りが15分遅れ、事前確認の時間も失った。
・トークガイドも読んでいなかった。
・前日までスライドを修正し、毎日3時間ほどしか寝ていなかった。資料を完成させることに時間を使い切り、実際に話せるか確認する工程が最後に落ちた。
・通して話す必要があるのは、講義の260分だ。それでも、一度通すだけで260分かかる。そのリハーサル時間を残せない作業量だった。
・1スライド1メッセージでも、100枚あれば100のメッセージになる。講義全体としては盛り込みすぎていた。
全て伝えたい内容なのだが、そこから20%~30%ほど削り、その時間を重要な説明や、受講者が考える時間に使うべきだった。
次にやること
もう講師の話しがまわって来ることはないだろうが、次にパワポで何か発表する機会がまわってきたら・・・
・最初にリハーサルの時間を確保する。その残りで作れる量まで、内容を削る。
・本番前には講義部分を一度声に出して通す。
・会場では、PowerPointを全画面で表示し、Teamsの操作画面と分けられるか確認する。
・トークガイドも一度使っておく。ガイドは今回、実際に役に立った。だが、ガイドがあれば練習しなくてよいわけではない。
最後に余った時間でリハーサルをするのではない。
先にその時間を取り、残った時間で伝えられる量まで削る。
それが伝える、ということだろう。


